大学のパパたち集合
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しばらく大泣きしてると、大旦那の研究室の扉が開いた。
「大丈夫?どうしました?」
と、大旦那の向かいの研究室にいる中国古典講師の枯野先生が顔を出す。
枯野先生は、あたしのこと見るなりさっきの大旦那みたいにぎょっとした顔をした。
「月川さんっ?」
「うっ、うえええん!!」
「今、ちょっと彼女いろいろあってね。僕がいじめたわけじゃないから」
「はいはい、月川さん、とりあえず椅子に座ろうか。落ち着いて、深呼吸して」
あたし、枯野先生に椅子に座らされて深呼吸する。
深呼吸してる間に、枯野先生と入れ替わりで上代文学講師の田中先生までやってきた。
「大丈夫?これ、お菓子。しっかりするんだよ?」
「ひっく……はぃ……お菓子、あり……がとうぇぇ……」
「これ飲んで落ち着こう」
と、今度は枯野先生がいい香りのお茶を紙コップに淹れてきてくれる。
「台湾のお茶だよ。落ち着くから」
「あ、ありがとう……ございま……す……」
なんか、至れり尽くせり。
あ、お茶、お花の匂いして美味しい。
「じゃ、私たちはこれで。あとは佐々木先生、お願いします」
と、田中先生が敬礼して出て行く。
「僕一人ですか」
「頑張って」
枯野先生は、満面の笑みで大旦那の応援して戻って行った。
「……さて、月川さん、落ち着いた?」
「は、ぃ」
おかげさまで。
枯野先生も田中先生も子持ちパパだからか、扱いには慣れてるみたいだった。
「なにがあったん?」
さて、大旦那パパにはたっぷり話聞いてもらおう。
あたしは、拙い言葉で今日あったことを大旦那に全部話した。