表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
265/416

ご機嫌斜めかよ

265


近くのコンビニでお昼買って、公園に向かう。

今日は天気もいいし、小さい子どもづれのお母さんたちが井戸端会議してた。


さあて、ベンチはいずこ……ん?

あのベンチで本読んでる人……うーん。


もしや……宗旦狐ではあるまいか?


いや、でも視力ほんとくそだからあてにならない。

あたし、そおっと横から近づいた。


うーん、あの黒縁眼鏡とあの鼻筋……どう見ても宗旦狐のようなーー


「不審者かと思いました」


一メートルくらい近づいたところで、男は本から目を離さずにこう言った。


あ、やっぱり宗旦狐か。


「……すみません。目が悪くて。もしかして朝倉先生かなあって」


「俺じゃなかったら、完全に不審者だと思われてましたよ」


……なんか、棘のある言い方だな。

ご機嫌斜めかよ。


宗旦狐は本をぱたんと閉じた。

あ、夏目漱石のこころだ。

読み直してたのかな。


「お隣、いいですか」


「どうぞ」


珍しく、宗旦狐はにこりとも笑わない。

冷たい表情をしてた。


まあ、別に嫌われたって気にしない。

あたしは図々しく宗旦狐の隣に座った。


「どうしてこんなところにいるんですか。平塚からここまではかなりあるでしょう」


「ここに来れば、先生とお話しできるかと思って」


「暇ですね」


宗旦狐のその言葉に、思わず舌打ちが出る。


「あんたに言われたくないです」


おめえの方がさんざんあたしのこと追い回してたんだろうがよ!

とまでは、命の恩人に言えなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ