珍しくナイスだ、妹
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「その先生に、直接会ってお礼しなきゃと思うんだけど。なるみ、助けてくれた先生、誰か知らないの?」
あたし、首を横に振る。
宗旦狐には、あたしからあとで連絡入れておくことにした。
少しして、白衣着た病院の先生と看護師がやってきた。
検査のところ骨折もしてないし、体の火傷も喉の火傷もそれほど酷くないみたいで、一週間程度で退院できるようだった。
夕方頃になると、仕事を早退してきたらしい父がやってきた。
父は包帯を巻かれたあたしを見るなり、
「でかいミイラだ」
とかほざきやがった。
うるせえ。
その数分後には、花村が来てくれた。
花村はあたしの姿見つけるなり、
「なるみいいいいいいい!!!」
泣き叫びながら突進してきた。
ありがたいけど、ここ病室だから。
しかも個室じゃないから。
他の患者さんもいるから。
そう説明したいけど、声はでない。
「七海ちゃん、あれから毎日来てくれてんのよ」
と、母が説明してくれる。
「すっごい心配したわバカ!なるみは放送室行ったきり戻ってこないし火は迫ってくるし!超怖かったんだからね!」
花村、あたしへの心配通り越してキレてる?
「ごめ、ん……」
「美月ちゃんとうちの泣き叫ぶ声で、もう壮絶な修羅場だったんだから!でも、ほんと無事でよかったよお。ーーあ、美月ちゃんにももう連絡入れといたから。明日来るって」
え、はやくない?
いつの間に連絡交換してたの?
「あんた、巧さんにも連絡入れときなさいよ」
と、母。
ああ、そうか、救急搬送されてるのに彼氏とやらに連絡しないのは不自然か。
それよりあたし、花村に聞きたいことある。
「ねえ……喉、乾いた」
「わたしもー。ママ、父ちゃん、下の売店でなんか買って」
珍しくナイスだ、妹。
その言葉で、父と母は妹と共に病室を出て行った。