まだ、立てる
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「誰かあああ!誰かいませんか……!げほっ」
うう、煙吸い過ぎた。
喉が痛い。
ああ、もうダメかもしれない。
これまで男どもに「豚の丸焼き」とか弄られてきたけど、まさか本当に丸焼きで死ぬなんて。
「いやだあ……うええん」
丸焼きなんてやだ……!
その前に窒息死しそうだけど。
ーーでも、思えばそんなに悪くない人生だった。
家族がいて、友だちがいて、そんでもって本気かどうかわからないけど、自分を好きだって言ってくれる人もいた。
きっと神様は、「最後にお前みたいなデブスでも異性から好きだって言ってもらえて幸せだっただろうだから死ね」って意味であたしを宗旦狐と出会わせたんだ。
うー、まだ死にたくない。
でも、息が、苦し……暑い……。
もう、立ってられない。
本当に、あたしここで死んじゃうんだ。
……宗旦狐は、悲しむのかな。
最後まで好きかどうかわからなかったけど……出会えてよかった。
「なるみさん!どこですか!」
あ……ついに幻聴ーー
「なるみさん!!」
どんどんと扉を叩く音。
幻聴じゃ……ない!
「朝倉……せんせ……たすけ……!」
声が、思うように出ない。
「今助けます」
声が聞こえたかと思えば、次の瞬間には、宗旦狐が扉を蹴破って室内に飛び込んできてた。
あたしの全体重で体当たりしても壊れなかった扉が、すぐに開いたのである。
敗北感と扉への腹立たしさと助かるかもしれないという安堵でもう、ぐちゃぐちゃ。
「なるみさん、立てますか」
「う……は、い」
なんとか、まだ、立てる。
あたしは宗旦狐の肩を借りて、放送室を出た。