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三人称

247


その場にいる誰もが、あの燃え盛る炎の中にまだ人がいるという事実に震えた。


遠くから、サイレンの音が聞こえてくる。


花村は、涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら朝倉に縋り付いた。


「なるみを……なるみを、助けてください!お願い……!」


宗辰は、震える花村の肩にそっと手を添えた。


「なるみさんが、どこに向かったのか教えてください」



ーーああ、これは愛しきれなかった彼女への贖罪だ。


……とんだ偽善だが、それでもいい。



「なるみは、水場の隣の放送室に行ったんだと思います」


「わかりました」


「お兄ちゃん……!」


と、宗辰の手を美月が掴んだ。

その目は明らかに、「行くな」と言っていた。


美月の背後に立つ巧に目配せをする。

巧は小さく頷いた。



宗辰は美月の手を一瞬で振り払い、走り出す。


「お兄ちゃん!やだーっ!お兄ちゃんっ!!」


宗辰の背中を突き刺すような、美月の慟哭が聞こえる。


振り返ると、暴れる美月を巧と佐々木と柳原が必死に止めているのが見える。

大人の男三人がかりでは、さすがに抜け出すのは無理だろう。

宗辰は安心してフランス庭園とは反対側に向かった。


こちらはまだそれほど火の手は回っていない。


壁に備え付けの消化器があった。

それに、蛇口とバケツもある。


宗辰はバケツいっぱいに水を張って、それを頭から被った。

そして、消化器で窓を割る。

酸素が一気に室内に流れ込んだせいか、炎の勢いが増した気がした。


すかさず、その炎を消化器で消す。

入り口を確保してから、室内に入り込んだ。



ーーもし死んだら、そのときは彼女になんて詫びようか。

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