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三人称

246


ーーーーーー


『火事です!火事です!黄昏館フランス庭園側の部屋から火の手が上がっています!至急、外に避難してください!』


天井のスピーカーから聞こえてくる声は、間違いなく月川なるみのものだった。


その声が聞こえた途端、むせ返るような煙の臭いがする。

それに加え、暑さを感じた。


母親や高校生たちが、悲鳴を上げて一斉に我先にと外へ逃げ始める。


「朝倉先生!」


部長の子が、泣きそうな声で宗辰を呼んだ。


「落ち着いて。みんなも直ぐに外に避難しなさい。いいね?」


「は、はい!」


宗辰はお客と茶道部員たちの後ろにつきつつ、フランス庭園側の廊下を見る。


火の手は、直ぐそこまで迫ってきていた。

木造のせいか、火の回りが速い。


「二階にまだ人はいる?」


出口近くの階段から降りてきた学生に問いかける。


「いえ、わたしたちで最後です!」


「ありがとう」


……嫌な予感がする。


宗辰は後ろ髪を引かれつつ、自分も黄昏館を出た。


「朝倉!」


と、柳原と佐々木が人混みを掻き分けて近づいてくる。


「美月は!?」


「お兄ちゃん!」


佐々木の声と、美月の声が重なる。

佐々木は美月を確認すると、思いきり抱きしめた。


「なるみさんと花村さんは?」


どうか、どうか避難しててくれ。

そんな願いを込めて、朝倉は巧に聞いた。


しかし、巧は首を横に振る。


「別行動だった。俺と美月は先に昼食を買いにーー」


「朝倉先生!」


と、フランス庭園の側から、なるみの幼馴染の花村が駆けてきた。

なるみの姿は、ない。


「なるみが!なるみが出てこないの!ずっと呼んでるのに、全然出てこないの!」



ーーああ、嘘だろ。


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