教えてくれないんかい!
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「あいつは、朝倉にキレる資格なんかない。そもそも、巧くんと美月ちゃんの世話役を朝倉に頼んだのは佐々木なんだから。それを一番理解してるのは、あいつ自身だろうがね」
「あの……朝倉先生が殺すって、どういう意味なんでしょう」
宗旦狐が人殺しなわけない。
そうわかってても、あの大旦那の発言からは、そうとしか聞き取れなかった。
「月川さんは、朝倉からまだなんにも聞いてないんだね」
「はい」
「なら、私は何も言わない。いつか、自分の口から話すつもりでいるんだろう」
確かに、いつか必ず話すって言ってくれた。
でも、どこまで好感度あげりゃ話してくれんだ?
端末の乙女ゲームだったら、大体一ヶ月くらいで攻略できんぞ?
「ところで、月川さんは朝倉のことどう思ってるの?」
また、その質問か。
「変な人だけど、いい人だと思います」
「好きか嫌いかで言うと?」
「嫌いでは、ないです。でも、好きかと聞かれても、はいとは答えられないです」
「私のことは?」
「好きです」
「違うよね?」
え?なにが?
だって、柳原先生が話してくれる怖いお話とか、妖怪学とかめっちゃ好きだし、手相もできるってもう女の子のために存在してるようなものでしょ?
「まあ、いいや。朝倉のことも、私への好きの意味も自分で気づけ」
教えてくれないんかい!
「じゃ、私は佐々木のこと叱りに行ってきますよ」
確か、大旦那は空手部だった気がする。
前に、全然経験ないのに押し付けられたってぼやいてた。
「体育館にいると思います。行ってらっしゃい」
あたしは、柳原先生の背中を見送った。