うひゃあ!
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一時間くらい経つと、ちらほらとお客さんがやってきた。
花村は美月ちゃんと持ち前のコミュ力ですっかり打ち解けたらしく、服の話で盛り上がってる。
あたしはそこらへんの茶碗を集めて洗うことにした。
水場は、茶話会の部屋からぐるっと回って真反対の場所にある。
その隣は、物置状態になった放送室のような部屋があった。
あたしは外の音を聞きながら茶碗を洗った。
人の笑い声とか、話し声とか、音楽が遠くの方から聞こえてくる。
「めんどうなことになってるね」
「うひゃあ!」
唐突に、背後から声をかけられて思わず変な声が出ちまった。
てか危うく茶碗割るとこだったわ!
振り返ると、柳原先生がにやっと笑ってた。
「急に話しかけないでくださいよ」
「佐々木、朝倉にキレたんだって?」
ああ、美月ちゃんから聞いたのか。
「そうなんですよ。朝倉先生が勝手に美月ちゃん連れ出したからか、凄い剣幕で」
「たぶん、キレたのは連れ出したからじゃないな」
柳原先生はそう言いながら顎に手を当てた。
この先生がこういう仕草すると、推理小説の探偵に見えてくる。
「佐々木、朝倉に変なこと言ってなかった?」
あの人たち、変なことしか言ってなかった。
「うちの娘も殺す気かって。先生、どういう意味かわかります?」
「あの馬鹿、そんなこと言ったんか」
柳原先生はその意味がわかるらしい。
苦虫噛み潰したみたいな顔してる。