カシャカシャカシャカシャ
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「なんの撮影会?」
と、柳原先生が顔を出した。
ちょうど今来たところらしい。
「あ、柳原先生。今、朝倉先生と部員さんたちのツーショット撮ってるんです。柳原先生も撮ります?」
あたし、部員の端末構えながら応対する。
柳原先生は手をパタパタと振った。
「私は遠慮しておくよ。ーー巧くん?大きくなったねえ」
「ご無沙汰しております」
「あのね、おじちゃん。今日、美月たちがここにいたことはパパには内緒ね。今ちょっと喧嘩してるから」
と、巧さんの挨拶と美月ちゃんの口止めが背後から聞こえてくる。
その間、写真を撮り終わった部員たちは、いそいそと動いて柳原先生のためにお茶を点てたり、お菓子をすすめたりしてた。
柳原先生もなかなか人気あるんだよね。
「ありがとうございました!」
あたしは最後の部員に端末を返す。
「両手に抱えきれないほどの花ですね。女子大っていいところでしょう?」
と、どこぞのマスコットキャラクター扱いだった宗旦狐に、にやにやしながら問いかけてみた。
「俺はなるみさんだけで手がいっぱいなんで」
「でかいって言いたいんですか?殴りましょうか?」
「……ちょっと、なるみ」
あたしが拳を握りしめたところで、花村にまた小突かれる。
おっと、花村のこと忘れてた。
「先生とツーショット撮りなよ」
「え?いや、あたしはいいよ」
この前撮ったし。
「撮ってもらえますか?」
と、宗旦狐が自分の端末を花村に渡した。
「え……」
「俺が撮ってもらいたいんです」
宗旦狐は小声でこんなことを言った。
はあ。
気を遣わせたかな?
あたしは、大人しく宗旦狐の隣に立って花村の方を向いた。
「はーい、笑ってー」
そう言いながら、花村が構える宗旦狐の端末は、次の瞬間カシャカシャカシャカシャとかいう異音を発した。
「あはは、間違えて連写しちゃったー」
……こいつ、わざとだな。
「ありがとうございます!」
おい、宗旦狐、なんで嬉しそうなんだ。
咎めろや。