なんと耽美であることよ……!
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茶話会は戦前から大学にある、黄昏館という大正ロマンな雰囲気が漂う木造建築物の中で開催されていた。
この建物はもともと、昭和後期まで大学の第一本部棟として使われてたらしい。
新しい本館ができてからは、ここは茶道部とか華道部とかかるた部の部室になってる。
今日も、他の部活の子たちの控室になってるみたいだった。
戦前から建ってるせいか、それとも大学の敷地が元陸軍駐屯地だったせいか、この建物には幽霊が出るとかよく噂されてた。
でも、あたしはこの建物から見るフランス庭園の桜が好きだった。
黄昏館のすぐ脇に隣接するフランス庭園は、春になると桜に梅、藤の花にツツジといろんな花を咲かせる。
きっと、来年も綺麗に咲くんだろう。
あたしたちはその黄昏館に入って、目の前の部屋でやってる茶話会の様子を伺う。
まだ始まって間もないからか、お客さんはいなかった。
お客さんはいないけど、振袖姿の部員らしき子たちはたくさんいる。
その中に囲まれるようにして一人、笑顔を浮かべながら部員たちと会話する袴姿の男がいた。
なんと耽美であることよ……!
あたし、声かける前に端末でその姿をすかさず撮影。
「あとで美月にも送ってください」
「おっけー」
シャッター音で気づいたのか、宗旦狐はあたしたちの方を向く。
それから、部員たちに断ってこっちに近寄ってきた。
「来てくれてありがとうございます。美月ちゃん……」
「パパに内緒で来たの。どうしても、お兄ちゃんの和服姿見たくて。少ししたら直ぐ帰るから」
宗旦狐は困ったように笑いながら、
「美月ちゃんから絶対目を離さないように」
と、巧さんに声をかける。
「あなたに言われなくても、離すつもりはありません」
巧さんは、相変わらず敵意剥き出しの口調でこう言い放つ。
その様子を見て、花村があたしに耳打ちしてきた。
「あの二人、仲悪いの?」
「たぶん……」
理由はわかんないけど。