文化祭当日
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朝倉宗辰:声上げて笑いながら保存しました。
月川なるみ:消してください。
朝倉宗辰:ありがとうございます。なるみさんのそういうところが好きです。
月川なるみ:消してください。
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そんなこんなで、文化祭当日。
あたしは大学の門の前で花村を待ってた。
あれから大旦那とはたまに顔を合わせることがあったけど、挨拶だけで会話をすることはなくなった。
研究室にも行ってない。
それに、宗旦狐さえも、ほぼ毎日のように資料室に来てたのに、来るのは授業がある木曜だけになった。
お互い、顔を合わせづらいのかもしれない。
「あ、なるみさん!」
と、名前を呼ばれて顔を上げる。
「み、美月ちゃん!?」
目の前には、美月ちゃんと私服姿の巧さんがいた。
美月ちゃんとは、たまに連絡は取ってたけど、顔を合わせるのはあの日以来だった。
美月ちゃんは、しーっと指を立てて見せた。
「パパには内緒で、兄貴に連れて来てもらったの。お兄ちゃんの和服姿なんて、もう一生お目にかかれないかもしれないでしょ?」
あたし、巧さんに視線を移す。
ああ、こりゃ相当激しく駄々こねられたな。
「なるみ、お待たせー」
と、花村が合流する。
花村、美月ちゃんと巧さん見てーー主に巧さんをガン見してーーあたしを小突く。
「誰、この可愛い子と……イケメン」
「大旦那のお子さんの巧さんと美月ちゃん」
「初めましてー!なるみの幼馴染の花村七海です!」
おお、花村の声のトーンが変わった。
美月ちゃんは美月ちゃんで、目をきらきらさせながら花村のこと見てる。
「すっごいオシャレですね!その服素敵!」
「えー、嬉しい!これね、うちが働いてる服屋のなのー!」
ああ、巧さんが無表情になってる。
「あの、きゃっきゃうふふしてるとこ悪いんだけど、そろそろ行こうか」
なんか、今からすっごく嫌な予感しかしないのはなんでだろう。