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無力……

233


ーーバシッ。


肌と肌がぶつかる音。

あたしはそっと大旦那の方を見た。


そこには、大旦那の手を自分の手で防ぐ宗旦狐がいた。


「殴る相手が違いませんか」


宗旦狐は、そう言って大旦那の手を払った。

大旦那は、我に返ったように目を見開いて止まる。

そんな大旦那をよそに、宗旦狐は美月ちゃんに目線を合わせるようにして屈んだ。


「美月ちゃん。佐々木先生は美月ちゃんを心配してるんだ。だから、あんなこと二度と言うんじゃない」


「だって……!お兄ちゃんのこと悪く言うなんて、許せない!」


美月ちゃんは、泣いてた。

ぼろぼろぼろぼろ、宗旦狐にフラれたときみたいに、涙を零してた。


「俺は、なにを言われてもしょうがない人間なんだ。美月ちゃんが思ってるほど、善良じゃない。ごめんね」


「……行くぞ美月」


大旦那は、心底疲れ切ったような顔で美月ちゃんの腕を引っ張った。


「やだ!だって、お兄ちゃんはーーお兄ちゃんは、美月の家族だもん!」


その言葉を最後に、美月ちゃんは資料室から連れ出されてしまった。



あたしは、残された宗旦狐の背中に、なんて声をかけたらいいかわからなかった。

でも、なにか声をかけずにはいられない。


「あの……」


声をかけてみるも、少しも気の利いた言葉なんか出てこない。

言い淀んでると、宗旦狐の方が振り返ってこう言った。


「すみません。今日は、帰ります」


宗旦狐の笑みは、今まで見たこともないくらい悲しげだった。


宗旦狐はそのまま、ゆっくり資料室を出てってしまう。



あたしは、なにも声をかけてあげられなかった。


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