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突然の修羅場
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「勝手なことをして、すみませんでした」
宗旦狐は、言い訳するわけでもなく、あっさりと頭を下げた。
その宗旦狐に、大旦那が摑みかかる。
「お前は……うちの娘も殺す気か」
……え?殺す?
「パパやめて!美月がお兄ちゃんに無理言って頼んだの!」
その言葉を聞いて、大旦那は一先ず手を下ろした。
そして、その手で美月ちゃんの手首を掴む。
「痛い!」
「帰るぞ。ここには二度と来るな。朝倉にも二度と会うんじゃない」
「はあ!?なんでそんなことパパに言われなきゃなんないの!?さっきの事情聴取だって、駆けつけてくれたのはお兄ちゃんだったんだよ!?」
叫びながら、美月ちゃんは激しく抵抗する。
あたしも宗旦狐も、どうすることもできなかった。
「うるさい!言うことを聞きなさい!」
「いやだ!今まで散々ほっといてたくせに!あんたなんてーー」
「父親じゃない!」
美月ちゃんがそう叫んだ途端、大旦那は手を大きく振り上げてた。
殴られる。
そう思い、目を逸らした。