なにごと!?
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「警察が動いてくれてるなら、安心だね」
「うん。でも、パパも兄貴も外には極力出るなってうるさくって。お兄ちゃんがいてくれたら、きっとパパも兄貴も許してくれだろうと思ってついて来たんだー」
美月ちゃんは、いたずらっ子みたいに無邪気に笑った。
あんなことされても、こんなふうに笑ってられる美月ちゃん、強いな。
「そうだ、なるみさん。美月になるみさんの連絡先教えてくれる?なんかあったとき用に」
なんかあったとき用にって、物凄く不穏な言葉なんだけど。
まあ、別に断る理由もないから、美月ちゃんと連絡先を交換した。
ーー十二時十分。
それが、二限の授業が終わる時間だった。
二限の後は、学生たちのお昼休みだ。
十号館は、お昼休みに関係なく静かだった。
大旦那が、物凄い形相で資料室の扉を開けたのは、授業が終わって数十分後のことだった。
いつもどおり、三人で会話してたところに、大旦那がノックもなしに駆けつけてきた。
「美月!」
大旦那の怒鳴り声に、あたしは思わず肩を震わせた。
大旦那が怒鳴るなんて、滅多になかったからかなり驚いた。
「お前、なにしてんだこんなところで」
「なにって、いつもどおり……」
「外に出るなって言っただろうが!ーーお前が連れ出したのか朝倉」
と、大旦那の怒りの矛先が宗旦狐に向けられる。
ちょっとちょっと、なにごと!?
どうしちゃったの、大旦那!?