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人間とは、憐れな生き物である
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「まあ、とんだ災難でした」
あたし、食べ終わったお弁当箱片付けながら肩をすくめる。
「でも、いいんです。今日はようやく柳原先生にお会いできますから!」
「はいはい」
「あー、早く来ないかなあ!あたしがどれほどこの日を待ってたかわかります?」
「知らん」
柳原先生。
あたしの憧れの人。
非常勤講師で、民俗学を研究してらっしゃる方である。
あたしは、柳原先生から妖怪学を学んだ。
例えば、狐とか犬神とかに憑かれた家憑きの話。
村の中で途端にお金持ちになった家の説明をつけるために、周りの人間たちが勝手に差別化した結果、狐憑きの家だとか犬神憑きの家だとかが生まれたらしい。
「あそこは狐憑きの家だから、近寄るんじゃないよ」
とか言われて、その家は村から孤立させられてきた。
完全に人間の僻みである。
人間ってつくづく憐れな生き物だと思った。
だから、あたしは化け狸になりたい。
柳原先生に飼われたい。