なんだこいつ、かっこいい
228
「また、昔の連中と関わってるのか」
と、巧さんは警察官らしい厳しい目で美月ちゃんを見下ろす。
「大丈夫だって。まだなにもされてないし」
「この間はお金巻き上げられて、さっきも集団に暴行されてました」
美月ちゃんはじろりとあたしを睨む。
だからあたし、にっこり笑い返した。
「これから、学校に行くときは俺がついて行く。学校には連絡しておくから。あと、外出は控えろ」
「いやだ」
「また宗辰さんに助けてもらうのか。今度はあんな怪我だけじゃすまないぞ」
「そんなの、兄貴だって同じことでしょ」
「なんのために警察官になったと思ってんだ。あの人よりは、今の俺の方がお前の力になれる」
……なんだこいつ、かっこいい。
シスコンのくせにかっこいいだと。
「いいな」
「……わかったよ」
「それから、これ」
と、巧さんは小型のおもちゃみたいなものを美月ちゃんに差し出した。
あ、それ、スタンガンだわ。
「暴力と防衛は別物だ。いざとなったら、自分の身は自分で守れ」
美月ちゃんは、それを少し不満げに受け取った。
「なるみさん、妹が世話になりました」
と、巧さんは急にあたしの方を向いて脱帽し、丁寧に頭を下げた。
あれ、どうしよう、かっこいい。
「いえ、とんでもないです。あたし、叫んだだけなんで」
「馬鹿な妹ですが、これからも仲良くしてやってください。これ、ここの代金です」
そう言って、巧さんは二千円財布から取り出してテーブルに置いた。
「えっ、いやそんな大丈夫です。頂けません」
「お釣りは結構です。ーー美月、行くぞ」
「え?どこ行くの?」
「父さんの所だよ。まだ大学にいるはずだから」
「やだ!パパに絶対言うでしょ!」
「心配しなくても父さんならもう全部知ってる。ほら、さっさと立て」
あ、大旦那が知ってること、そんなあっさり言っちゃうんだ。
「は!?全部ってどこからどこまで!?ちょ、引っ張んな!ーーなるみさん、今日はありがとうございました。また!」
「あ、うん。気をつけてね」
そんなわけで美月ちゃんは、制服姿の巧さんに連行された。
その姿は若い子が逮捕されて、警察に連行されてるようにしか見えなくて、辺りがざわついてる。
この場合、現場に居合わせたあたしは周りからどう思われてんだろ。
てか、二千円。
さすがに多いよ巧さん。