ああ、嘘でしょ
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「ありがとうございました」
カーキ色の毛糸……買っちまった。
いや、これ、自分のだし!
別にこれ、宗旦狐のためのじゃなくてあたしのだし!!
あたし、ちょうどカーキ色のマフラー欲しかったんだよね!!!
あははは。
「はあ」
宗旦狐にあげたら、つけてくれっかなあ……。
日頃、なんだかんだいろいろお世話になってるし、お礼って意味で渡す分にはおかしくはないかな。
いや、でも手編みのマフラーは重いか?
「やめて!」
と、駅に行くのに近道の路地裏に入ったところで、悲鳴が聞こえてきた。
この先に、確かちょっとした広場がある。
多分、そこからだった。
てかそれより、さっきの声、聞き覚えがあんだけど。
あたし、予想が外れてくれと、そっと悲鳴が上がった広場を覗いてみる。
「おいおい、嫌ならやり返してこいよ。昔のお前ならすぐ手あげてただろおがよお」
「もう、暴力は振るわないっつってんだろ。お前ら、いい歳してまだこんなことしてるとか、マジだせえんだけど」
ああ、嘘でしょ。
美月ちゃんだった。
四人の男女に囲まれて、膝ついてる美月ちゃんの髪の毛を男が掴み上げてた。
「いい子ちゃん気取ってんじゃねえよ!」
と、女が美月ちゃんのこと平手打ちする。
あたし、咄嗟に大声出してた。
「おまわりさん!こっちです!こっちで女の子に暴力振るってる奴らがいます!」
「おい、やべえぞ。警察だって」
あたしの叫び声聞いた男女四人は、舌打ちを残して逃げて行った。