佐々木家トップシークレット
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「そういえば、今日は美月ちゃん来ないんですね。学校ですか?」
いつもなら、このくらいの時間に「お兄ちゃーん」って叫びながら資料室かこっちに突撃してくるはずなんだけど。
「あー、なんか、最近昔の友だちと会ってるみたいなんだよねー」
昔の友だち?
幼馴染とか?
宗旦狐の表情を見る限り、幼馴染とか平和的な関係の友だちではなさそうなんだけど。
「中学のですか」
「そう。僕は美月の中学の素行について知らないことになってるから、そこらへんは巧に任せるしかないんだよ。でもまあ、心配だよね」
「昔の友だちって、そんな心配するような子たちなんですか?」
事情はよくわからないけど、なんとなくよくないってことは察した。
「月川さん、これ佐々木家トップシークレットなんだけど墓まで持っていける?」
佐々木家トップシークレット……。
「善処します」
「絶対口軽いでしょ。これほんとに学生に知られたりしたらまずいんだよ」
「大丈夫です、絶対言いません」
そもそも学生あんま来ないし。
お話しできる学生なんていないし。
大旦那は疑惑の眼をあたしに向けてくる。
信用ないなあ。
前に大旦那が大好きなアイドルのブロマイドを財布に入れてること、大旦那のゼミ生だった友だちにうっかり話したからかな。
と、痺れを切らしたらしい宗旦狐が、いきなり爆弾を投下してきた。
「美月ちゃんは、簡単に言うと元ヤンなんです」
……元ヤン?
えっと、元、ヤンキー?