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笑って誤魔化すしかねえ
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遅いお昼ご飯をすませたあと、あたしはほしいものがあるわけでもなかったから、花村の買い物にとことん付き合った。
服のほかに、靴にアクセサリーに化粧品と、女子力を次々に買う花村。
若干、やけになってた。
買うだけ買うと満足したらしく、「帰ろっか」と、自分からバス停に向かって行く。
外に出ると、空は既に真っ暗だった。
日が短くなったなあ。
花村とは、平塚駅前で別れた。
「文化祭、楽しみにしてるから」
「うん。十時に大学の門で待ってるわ」
そう言うあたしに、花村は頷いて「今日はありがとねー」と手振って駅の中に入って行った。
家に帰って、いつもどおり晩御飯とお弁当のおかずを作る。
今日は寒かったからクリームシチュー。
母が帰ってくると、あたしは母に吉田の結婚のことを話した。
母も吉田と花村が小さい時から見てきたから、驚愕すると共に随分と感慨深そうに聞いてた。
それから、
「あんたも、いつか巧さんとそうなるといいんだけどねえ」
とかなんとか言う。
「あはは、いつかねえ」
あたし、もう、笑って誤魔化すしかなかった。