にやにや?
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花村は、この店舗の店長と顔見知りだったらしく、店長を見つけると笑顔で話し出した。
その間に、あたしは店の外に出てベンチに座って花村を待つことにした。
だって、どう考えても場違いだし。
あたしは、やっぱり庶民派の洋服の方が落ち着くわ。
花村を待ってる間に端末を確認する。
と、宗旦狐から連絡が入ってた。
朝倉宗辰:文化祭で着る和服が用意できました。なるみさんの好みだといいんですが。
おお、和服用意できたんだ。
月川なるみ:フリルとかレースとかパールがついてなければ、大抵好みです。
朝倉宗辰:それは大丈夫です。弟(多分)も和服には手を出さなかったみたいですから。
(多分)って。
でもって、和服“には”ってなんなんだ。
……まあいいや。
月川なるみ:楽しみにしてます。
「あー、いたいた」
と、店から出てきた花村。
その両手には紙袋が下がってた。
……買ったんだ。
花村はあたしに近づくなり、眉を寄せてこう言った。
「なに、スマホ見ながらにやにやしてんの?」
「え?にやにやしてた?」
全然気づかなかった。
「それより、早くご飯食べに行こ。お腹空きすぎて死にそう」
「うちも。なに食べようかなあ」
ーーあたし……にやにやしてたのか。