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そびえ立つ壁
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あたしも花村もお昼ご飯を食べて来なかったから、行った先で食べようってなった。
で、いざ着いてみたら、もんのすっごい人!
どの食事処も二十組待ちとかで、アトラクションかよってくらいの人が並んでた。
「しゃあない、ちょっと時間ずらすために先にうちの店舗見学しよ」
ってことで、鳴るお腹を抑えながら、花村の店舗見学に付き合うことになった。
花村が働いてる洋服屋のコンセプトは、“働く女性を輝かせる”とかだった気がする。
そのコンセプトに則ってるのか、店内にはオフィスカジュアルな洋服が並んでた。
「えー、うちの店舗より広いー」
と、花村は羨ましそうに辺りを眺めてる。
あたし、場違いだって理解しつつ、花村の後をついて行きながら、近くにあったワンピースの値段をちょっと拝見。
……八千円。
嘘だろ、あたし二千円のスカート買うのにも躊躇すんだけど。
ふいに、前を歩く花村の背を眺める。
あれ、全身で総額いくらなんだろ……。
正社員とフリーターの間にそびえ立つ高い壁を見た気がした。