点ててくれって言うから
203
「お手伝いって、あたし所作とか全然わかりませんよ」
茶道なんて、流派の中に裏千家と表千家があるくらいしかわかんない。
でもって、それらがどういう違いがあるのかもわからない。
「なるみさんは、洗い物をお願いします。茶碗の数がそんなにあるわけではないみたいなので」
ああ、なんだ。
それくらいならやってやらなくもない。
洗い物に流派とかないもんね。
「はーい!文化祭の日、学校休みだから美月もお兄ちゃんのこと手伝うよ!」
と、美月ちゃんが目をきらきらさせて挙手する。
宗旦狐と一緒にいたいって欲望がひしひしと伝わってきた。
「私もお昼頃に顔を覗かせようかな。どうせ暇だし」
「先輩は女子大生が出すお茶とお菓子が目当てでしょう」
「ばれたか」
柳原先生は、にやりと笑った。
下品な笑い方なのに、柳原先生がやると妙な色気が漂う。
「お茶とお菓子くらい、この月川が出しますよ?ペットボトルと飴ですけどね」
あたし、未開封のペットボトルのお茶とデスクの中にあった飴を見せる。
「せめて点ててくれ」
「しょうがないなあ」
まったく、わがままなんだから。
あたし、ペットボトルを必死に上下に振って泡立ててやった。
三人はお腹抱えて笑い出した。