一件落着……?
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「姉ちゃん、お見合いしたくないからって嘘ついてんじゃないのー?」
と、妹はにやにや。
なんだこいつ腹立つ。
あたしは渋々、今日宗旦狐と撮った写真を母に見せた。
妹、顔色変えて立ち上がり、それを覗き込む。
「ま、まじか……姉ちゃんが……男とツーショットって……しかも普通にイケメン……」
「信じられない……あの、なるみが……これ、合成じゃないよね?」
母と妹、茫然自失。
二人して失礼かよ。
あんたらそれでもあたしの家族か。
「おとうちゃん、いつから気づいてたの?」
と、妹が問う。
「さっき」
……さっき?
捕獲されて連行されてるとき?
「この人、名前は?」
「あさ……」
そこまで言いかけて、あたしは慌てて口を噤む。
やっべ、本名言っちゃダメだった。
しかも、偽名考えるの忘れてた。
うえー、どうしよう。
……そうだ、誰かの名前から取ろう。
「あさ?」
「あー……佐々木巧って人」
咄嗟に出たのが、この名前しか浮かばなかった。
「佐々木?もしかして、あんたの大学の佐々木先生と関係あるの?」
「あ、そうそう、佐々木先生の長男の巧さん」
ごめん!
まじごめん、巧さん!!
「先生の長男に手出すなんて、姉ちゃんなかなかやりおる」
「それならそうと、早く言ってくれればよかったのに。それじゃあ、お見合いは断っておくよ」
……ほっ。
なんとか、危機は逃れられたか。
「その代わり、今度うちに連れて来なさいよ」
「……今度ね」
なんだろう、丸焼きにされるのがただ先延ばしになっただけな感じ。
ーーま、まあ、とにかく、あたしは宗旦狐と巧さんのおかげで、なんとか危機を脱したのであった。
これにて一件落着。たぶん。
……あ、ティッシュ配りのバイトに辞めるって連絡入れよ。