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狸の丸焼きにされる……!
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宗旦狐が家の近くまで送ってくれた頃には、既に空には月と星が見えてた。
「今日は、ありがとうございました」
「また連絡してくださいね」
そう会話を交わして、宗旦狐と別れた。
家までの足取りはめちゃくちゃ重かった。
なんて、話を切り出せばいいんだろう。
頭フル回転させて考えるも妙案浮かばず、家に着いちゃった。
扉の前に立ってたら、カレーの匂いがしてくる。
妹は料理なんてできないから、親が作ってるんだろうな。
お腹痛い。
でも、いつまでもここにいるわけにはいかない。
あたしは両頬を叩いて、鍵を開けた。
「……ただいまー」
そおっと顔を出す。
その瞬間、二階から凄い勢いで妹が駆け下りてきた。
で、あたしの手首になにかはめる。
銀色の……手錠!?
「たぬき、捕獲したよー!!」
と、妹はリビングに向かって叫んだ。
おい待て、なんでうちに手錠なんかあんだ。
狼狽えてると、リビングの扉が開いて父が顔を出す。
「連行しろ」
「らじゃ」
いやいやいや、らじゃじゃねえよ。
これじゃこれから丸焼きにされる狸じゃん。
あたしは、ほぼ無理やりリビングに連行された。