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どいつもこいつも
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鳴る、電車の警笛。
野次馬の悲鳴。
ブレーキの音。
あたしは男の手首を掴んで、ホーム側に思いっきり引き寄せた。
男はマネキンみたいに簡単にこっちに引き寄せられる。
が、引き寄せたのはいいものの、受け入れ体勢ができてなくて、そのまま男とホームに倒れ込んだ。
「っつう……!」
痛ってえ、後頭部もろに打った。
後頭部抑えつつ、隣の男の顔を覗き込む。
男も頭を打ったらしく、苦渋の表情を浮かべてた。
でもって、めっちゃ酒臭い。
「あの、大丈夫っすか?」
痛すぎてもう口調が荒くなる。
男の目があたしを捉えた。
そして、こんなことを言いやがった。
「俺の眼鏡、知らない?」
助けてもらって第一声がこれか。
どいつもこいつも。