堅気の人……だよね?
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「じゃあ、先生はどうしてあたしがあの人に二万円渡してるって知ってたんですか」
「それは、俺が巧くんに調べてもらったからです」
いつから警察官は探偵になったんだろう。
「最近、なるみさんの様子がおかしかったので。夕方から駅を私服警備してる巧くんなら、なにかわかるかと思いました」
「で、駅であの人に二万渡してるあたしを発見したと」
「本当は、なるみさんから助けを求めてほしかったんですけどね。まさかWワークしてまで、あの男に貢いでるとは思わなかったです」
どうやらWワークのことは、さっき仏から聞いて初めて知ったらしい。
「なるみさん、このまま心身ともに朽ち果てそうだったので、さすがに待てませんでした」
朽ち果てるって……まあ、生きることに無気力にはなってたけど。
「それで、誠司さんの行きつけだったパチンコ屋に、ちょうどお昼休み中だった巧くんを送り込んで、偵察してもらってたわけです」
「なるほど。……じゃあ、この箱は?これ、いつもらってきたんですか?」
あたし、手元にある祖母から預かったという木箱を見せる。
「それは一昨日、誠司さんが仕事に行ってる間に珠代さんから預かりました。ーー残念ながら、俺が誠司さんの実家の場所を知ってる理由は教えられません」
……だんだん、この人のことが堅気の人間に思えなくなってきた。