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似ても似つかない
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住所を書いてもらった後、あたしはきっぱりと実父に別れを告げた。
それから、巧さんにお礼を言って宗旦狐の車に戻る。
宗旦狐は、あてもなく車を走らせた。
車中は無音が続き、気まずさに耐え兼ねて、あたしはとりあえず口を開く。
「こんなことに、朝倉先生を巻き込んじゃって、本当にすみませんでした」
宗旦狐は、無言だった。
「馬鹿ですよねー、あんな嘘に騙されて、十万近く払っちゃって」
「本当は、なるみさんも気づいてたんじゃないんですか」
気づいては、いた。
でも、気づきたくなかった。
「あたし、佐々木先生と美月ちゃんみたいな関係が、羨ましかったんですよね。あんなふうに、あたしもなりたかった。金ヅルにされてる間は、あの親子みたいに見えるかなって思ってたんです」
でも、違った。
金ヅルにされてる間、あたしとあの人の間には、父子とは違うなにかもっと汚い関係があった。
佐々木親子とは、似ても似つかないほど、汚い関係だった。