なんだ、よかった
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ーーなんだ、おばあちゃん、元気だったんだ。よかった。
「なるみさんのことを話したら、いろいろ親切に話してくれました。ああ、これ。珠代さんから預かりものです」
と、宗旦狐は思い出したかのようにポケットから小さな木箱を出して、あたしにそれを渡した。
箱を開けると、その中にはおはじきやビー玉がたくさん入っていた。
昔、祖母から買ってもらったものだ。
祖母の家に遊びに行くと、必ずこれで一緒に遊んだ。
それは、小さい頃に遊んだまま、今もきらきらと光ってた。
祖母は、今までずっと持っていてくれたんだ。
あたしは、なぜだか涙が止まらなくなった。
涙腺が崩壊したのかもしれない。
拭っても拭っても、止まらなかった。
「北方誠司さん。あなたのしたことは、詐欺罪に当たります」
巧さんは、静かにこう言う。
「俺となるみは親子だ。親族相盗例で、詐欺罪にならないことくらい知ってんだよ!」
実父は、勝ち誇ったような顔でそう喚いた。
「ええ、ですから……」
ーーバキッ。
その音に、あたしは顔を上げた。
視界に入ったのは、拳を握りしめる宗旦狐と、頰を押さえて倒れこむ実父。
宗旦狐が、実父を殴った音だった。