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男なんて、どうなったっていい
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あれ、落ちるな。
多分、周囲の誰もがそう思ってた。
でも、誰もその人を助けようとはしてなかった。
男がふらついて、線路に落ちるぎりぎりのラインを踏む。
風でも吹いたらそのまま転げ落ちそうだった。
電車がやって来ることを知らせるアナウンスが鳴る。
ふん、他人がどうなろうと知ったこっちゃない。
ましてや男だったらなおさら。
そう思いながらも、その男から視線が外せなかった。
電車の音が、直ぐそこまで迫ってきてた。
あたしが動かなくたって、誰かが助けてくれる。
男なんて、どうなったっていい。
男なんてーー
男の身体が、大きく線路側に傾く。
その瞬間、あたしの身体は動き出していた。