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ドラマとかでしか見たことないや
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巧さんと宗旦狐の後をついて行くと、やがて、見知った中年男が視界に入った。
巧さんはその男の肩を叩く。
「ちょっとよろしいですか」
巧さんはそう言って、洋服の胸ポケットからなにかを取り出して見せた。
それは、ドラマとかでしか見たことがなかった、警察手帳だった。
「なるみ?」
あたしに気づいた男ーー実父は、信じられないというような顔であたしを見てた。
四人でパチンコ屋を出て、裏に回る。
そこは、ほとんど人が通らない薄暗い裏路地だった。
「あなたは、北方誠司さんで間違いありませんね」
巧さんは、無表情でつらつらと台詞を述べる。
「そうですけど」
「あなたは生活苦を理由に毎週、月川なるみさんから二万円を受け取っていましたか」
「合意の上です。なあ、なるみ?」
「生活苦のくせに、パチンコには行けるんですねえ」
と、宗旦狐がチクリ。
実父は宗旦狐に睨みをきかせた。