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察しのいい子は嫌いだよ
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ここまできたら、もう言わないでいることができなかった。
あたしは、宗旦狐の方をちらりと盗み見る。
宗旦狐は、言い逃れを許してくれそうになかった。
「……あれは、あたしの実父です。実父はこの近くで働いていて、たまたま数十年ぶりにこの間会ったんです。そしたら、生活に困ってるみたいで……」
「それで、毎週二万渡してたんですか」
宗旦狐は表情を険しくした。
あたし、値段まで言った覚えないんだが。
大旦那は目を丸くしてこんなことを言う。
「うちの資料室、そんな稼ぎよかったの?」
「Wワークしてたんですよ。資料室がない日は、朝から晩までティッシュ配ってたらしいです」
「情けないんですけど、お金足りなくて」
「お母さんには言ったの?」
「母とはちょっと、喧嘩してるんです」
「前に言ってたホテルに泊まったって、もしかして家出だったんですか?」
宗旦狐……察しのいい子は嫌いだよ。