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三人称

172


ーーーー


朝倉は北条の話を聞いて、なるみがWワークをしていたことを初めて知った。


朝倉がなるみの後を追おうとすると、


「朝倉先生」


と、北条から呼び止められた。


「僕は、あの子のことを大学一年生の頃から見てきました。あの子は今まで、一度も僕に愚痴を言ったことはありません。みんなが苦しんだ卒業課題も、一人だけ愚痴一つこぼさずこなしていました。でも、それは、彼女の卒業課題が楽だったからではないんです。むしろ、他の子よりも、もっと辛かったかもしれません」


朝倉は北条が、言わんとしていることはわかっていた。

朝倉は、無言で北条の言葉を聞く。


「あの子は、ああ見えて責任感の強い子です。在学中、ただ一人だけ教職と司書と司書教諭の資格を取得した上、前代未聞の卒業制作も書き上げました。ーーあの子はきっと、今の仕事を推薦した僕には、何も言わないでしょう。自分で選んだ道は、なにがなんでも突き進む子ですから」


そうだ。

あの子は、そういう子だ。


変に恩義を感じやすく、他人を頼ることを迷惑だと思い、自分から頼ることはしない。


まったく、損な性格をしてる。


朝倉はつくづくそう思った。


「朝倉先生。月川さんのことを、よろしくお願いしますね。あの子は、少しだけ自己犠牲的な部分もある。ちゃんと、見てやっててください」


「はい」


朝倉が頷くと、北条はにっこりと笑ってこう言った。


「吉報を、いつでも待ってますよ」


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