171/416
仏に隠し事はできない
171
「月川さん、大丈夫?」
「へ?」
「君、資料室がない日は、隣の駅でほぼ朝から晩までティッシュ配ってるでしょ。仕事中だと思って声はかけなかったんだけど」
見られてた……だと?
そうだ、仏の自宅の最寄り駅は確か隣の駅だった。
ああ、迂闊。
「顔色も、あんまりよくないし……。倒れたら元も子もないんだから、あんまり無理しないように」
「あはは、大丈夫ですよ。あたし、体力ありあまってますから!ーーそれじゃあ、お昼行ってきますね」
やっぱり、仏に隠し事はできないなあ。
あたしはそんなこと思いながら、教室を後にした。