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不審者現る
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「ああ、そんなことより、月川さんもはよ帰った方がいいよ」
「なんでですか?」
「なんかね、大学の正門の前にあやしい中年の男が居座ってるんだって」
と、巧さんはスーツの胸ポケットから端末取り出して、無言でなにかあたしに見せてくる。
それは、写真だった。
大学の正門に、一人の仕事帰りと思わしき中年男が佇んでる。
あたしは、呼吸が一瞬止まった。
「……あたし、お先に失礼します。すみませんが、戸締りお願いします」
「なるみさん?」
あたし、慌てて荷物持って宗旦狐の横通って資料室を出る。
正門まで走って、例の中年男を見つけた。
「パパ!」
パパは、あたしに気づくと笑顔で近寄ってきた。