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ゆっくり変われれば、それでよし
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美月ちゃん、照れたように笑ってこう言った。
「ねえ、お兄ちゃん、諸行無常って言葉、知ってる?この世にあるものは、常に変化し続けてて不変のものなんてないんだよ」
確か徒然草にそんなこと書いてあったような気がする。
さすが、中世文学研究者の娘なだけある。
「だから、美月が好きでい続けたら、いつかお兄ちゃんの心も変化するかもしれないよね?」
おー、確かに。
でも、
「それは、美月ちゃんにも言えることだよ」
うん。
そうね。
いつか、美月ちゃんの心も変化するかもしれない。
「えー、美月の心はそう簡単には変わらないよ」
美月ちゃんは「覚悟しててね」と、あざと可愛く笑う。
あたしの心は、どうだろう?
いつか、恋とやらを知って、誰かを好きになったりするんだろうか。
……まあ、今は、まだ知らなくてもいいだろう。
ゆっくり、ゆっくりと変化できればいいと思う。
徒然なるままに。