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……あたしには、無理だ
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「やだ……」
美月ちゃんはうつむいて、呟くようにこう言った。
それから、宗旦狐の腕掴んで叫ぶ。
「お兄ちゃんほどいい男なんて、どこにもいないもん!!」
……ひええ、言い切ったよこの子。
「美月は、お兄ちゃんが好きなの!ずっとずっと好きだったの!!誰よりもなによりも好きなの!!!」
美月ちゃん、叫びながらぼろぼろぼろぼろと涙を零していく。
……あたし、驚いた。
いや、ちょっと驚いたなんてそんなレベルじゃない。
そんなに泣くくらい、人間を好きになれる美月ちゃんが信じられなかった。
この子、凄い。
本当に、本当に宗旦狐のことが好きなんだ。
……あたしには、無理だ。
こんなふうには、なれない。