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まじなやつ
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で、案の定、宗旦狐はついてくる。
この暇人が。
「どういうことですか、なるみさん。俺に嘘ついたんですか」
宗旦狐、少したしなめるような口調でそんなこと言った。
あたし、構わずパソコンの電源入れて、メールチェックしながら適当に相手する。
「嘘ってなんのことですか?」
「昨日のメールです」
あー、肉じゃが煮込んでた時の。
「嘘じゃないですよ。ちゃんと肉じゃが煮込んでました」
味はどうだったか知らないけどね。
あたしが作ったんだから、きっと美味しかったに違いない。
宗旦狐の追求は止まらない。
「ホテルには、その後に行ったってことですか」
「はあ……朝倉先生には関係ないことですから」
もうほっといてください。
そう言おうとしたところで、詰め寄って来た宗旦狐に座ってたディスクチェアを回転させられ、無理やり向かい合わされた。
でもって、背後の壁に追いやられて身動き取れない。
宗旦狐は右腕を壁について、鉄格子みたいにあたしを囲った。
あ、やばい。
宗旦狐の目、まじなやつ。