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デブスはデブスなりに気遣ってますから
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翌日、あたしはホテルから直接大学に出勤した。
近いから、いつもより寝れた。
朝ご飯はコンビニで買って資料室で食べよう。
そんなこと考えながら、アメニティの歯ブラシで歯を磨く。
コンビニで朝と昼ご飯買って、資料室に向かった。
十号館に入ると、偶然大旦那と鉢合わせる。
「おはようございまーす」
なるべく、いつもどおりに見えるよういつもどおりの口調で挨拶した。つもり。
でも、大旦那は目を見開いたまま固まった。
えっ、なに。そんな不自然だったか?
「服が、昨日と同じ……だね」
ん?
ああ、そうね?
「月川さん、僕の記憶の中では、毎日欠かさず違う服着てたと思うんだけど」
「ええ、まあ」
デブスはデブスなりに気遣ってますから。
てか、よくもまあ、何百人といる中であたしの服いちいち覚えてんな。
「どっか、泊まったの?」
「ホテルに」
大旦那は、大袈裟にもじゃもじゃの口元を手で覆って驚愕した。