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募金活動
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「いくら必要なの」
「いや、やめてくれ。お前から金もらったなんてママに知られたら、なに言われるかわからないからな」
「黙ってりゃわかんないでしょ。あたしもそんな持ってるわけじゃないけど、おばあちゃんの治療費の足しにでもしてよ」
がめつい実父のことだから、もしかしたら嘘かもしれないと思った。
でも、実父は離婚前、母と共働きで稼いだ生活費の半分を自分の母親の小遣いとして、横流しするようなちょっとマザコンな部分もあった。
だから、自分の母親の健康状態を偽ってまで、娘に金をせびったりしないんじゃなかろうか。
幼い頃、ゴム跳びとかおはじきとかお手玉を教えてくれたのは、父方の祖母だった。
その祖母とも、もう何十年と会ってない。
もし、本当に体調を崩してたんだとしたら、孫のあたしができることは、限られてる。
あたしは、募金するつもりで実父に一万円札を渡した。