134/416
なるほど、確かにこんな人だった
134
母は、口では「勝手に会いたければ会えばいい」とは言ってたけど、態度から会わせたくない気持ちが滲み出てた。
そんなこともあって、実父とは疎遠になった。
幼いながらに母が苦労してたのは見てたし、実父が母にしてきたことも知ってたから、特に会いたいとか、寂しいとか思わなかった。
でも、いざ会ってみると、なるほど、あたしの実の父は確かにこんな人だったとか、いろんな楽しかったときのことが思い出せて懐かしい。
「あのとき、由香里がおねしょしちゃってさあ!」
「あー、あったあった」
とかなんとか、妹の由香里がやらかした思い出話に花を咲かせた。
二杯目のビールとチューハイが来たところで、実父が話題を変える。
「ところで、お前こんな時間まで働いてんのか?」
……ぎくり。