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よき父では、あった。
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「お前も、酒を飲める歳になったんだなあ!」
とりあえず入った居酒屋で、実父は愉快そうにこう言った。
数十年ぶりに会ったその人は、白髪が増えたし、シワも深くなった。
亡くなった父方のおじいちゃんの顔を彷彿とさせる。
親子だから当たり前なんだけど。
「お前、ちゃんと働いてんのか」
「近くの大学の資料室で勤務してる」
「そうか。大学、ちゃんと卒業したんだな」
「まあね」
実父と母は、あたしが大学入学するまでは連絡を取り合ってたらしい。
でも、実父からの養育費が振り込まれなくなった瞬間、二人は完全に縁を切ったようだった。
実父は、あたしにとってはいい父だった。
休日は遊んでくれたし、小学校の勉強は全て実父が教えてくれた。
ただ、母曰く夫としては最低だったらしい。
実父は大の浪費家で、金があれば直ぐに手を出して娯楽に注ぎ込んでた。
ある時は出会い系サイトで知り合ったお姉ちゃんと飲みに行ったり、ある時はパチンコですったり。
離婚してからも養育費は払ったり払わなかったりで、まあ酷かったらしい。