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あたしもつくづく変態だなあ
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正直、逆上するかと思った。
ビンタか、あるいは罵られるか。
昔観た昼ドラでは、そんな感じだったと思う。
でも、美月ちゃんは手を出すことも、声を荒げることもしなかった。
ただ、今にも泣きそうな顔でじっとうつむいてる。
罪悪感はちゃんと覚えてるよ。
そこまで凹まれちゃうとね。
ただ、正直、優越感もちょっと覚えちゃってる。
こんな可愛い子にこんな顔させたという優越感。
あたしも、つくづく変態だなあ。
「なるみさんは……宗辰お兄ちゃんのこと、好きなんですか」
美月ちゃん、上目遣いで問いかけてくる。
あたしもその顔、隠し撮りしたい。
「さっきも言ったとおり、あたし朝倉先生と会って間もないわけ。好きとか嫌いとかわかんないっしょ」
「会って間もない人が、宗辰お兄ちゃんの車の助手席に乗せてもらえるんですか」
なるほど、美月ちゃんはそれが気に入らないらしい。
わたし以外の女を助手席に乗せるなんてってことか。