ご飯で中和
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「そうだ、学生たちにもちゃんと教えてあげなくちゃ。可愛い後輩たちが、そんなクソ野郎に教えてもらってるなんて、たえられないもん。学長にも伝えた方がいいかな。あ、安心して、佐々木先生には美月ちゃんがそう言ったなんて言わないから」
美月ちゃん、今度は顔を真っ青にしてる。
でも、懸命に強気に出る。
「や、やれるもんなら、やってみれば?あんたみたいなたかだか資料室のスタッフが、田辺学長と知り合いだなんて思えないけど」
なるほど、美月ちゃんは田辺先生とも顔見知りらしい。
でも、残念でした。
「あれえ、美月ちゃん、知らないの?田辺学長定年退職して、今の学長さんは在学中あたしに教職科目の授業を教えてくれてた風見先生になったんだよ?」
これ、去年の暮れのことなんだけど、あんまり大々的に発表されなかったせいか、未だに学生でも知らない子がいる。
美月ちゃんが知らなくて当たり前か。
あらら、美月ちゃん、今にも泣きそうな顔してる。
このへんにしとこ。
「あのさあ、美月ちゃんが朝倉先生のこと好きなのはよおくわかったけど、それを他人に押し付けんのはどうかと思うよ」
「だって……」
「もうちょっと上手く立ち回んな。でなきゃ、今みたいに足元すくわれて痛い目みるよ。さっきの言葉は忘れてあげるからさ」
あたし、そこまで言って、生姜焼き頬張る。
……ありゃ、ちょっとしょっからかったなあ。
ご飯で中和。