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気をつけて帰ってくださいね
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「ありがとうございました。ガソリン代、いくらですか」
そう聞くと、宗旦狐は目を丸くした。
なに、なんか変なこと聞いた?
「なるみさん、どれだけ酷い男と付き合ってきたんですか。ガソリン代なんて請求したりしませんよ」
男と付き合ったことないとか、口が裂けても言えなかった。てか察して。
でも、普通、そうなんじゃないの?
押しかけとはいえ、送ってもらったわけだし。
「悪いですよ」
「俺が好きでやったことですから。あ、どうしてもって言うなら、頰にキスしてくださっても……」
「ありがとうございました。気をつけて帰ってくださいね」
一般車乗降場所に停車してもらい、あたしは礼を言って降りる。
「また、大学で」
宗旦狐はそう言って、帰って行った。