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やっぱいいや
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「交通費浮きますよ」
とかなんとかうまいこと言いくるめられたあたし、結局平塚駅まで送ってもらうことになった。
家まではさすがに自重したらしい。
「あ、これ、お土産です。栗、大丈夫ですか?」
宗旦狐は信号待ちの時、鞄から甘栗と書かれた袋を取り出して渡してきた。
「……ありがとうございます」
栗は好きだけど、わざわざお土産なんていいのに。
「美月ちゃん、楽しんでましたか?」
「はい。ずっと俺の右腕にひっついて嬉しそうに笑ってました。右腕だけ筋肉痛になりそうです」
「朝倉先生のこと、本当に好きなんですね」
「やきもちですか?大丈夫です、俺はなるみさんひとすj……」
「その頭の中どうにかなりませんか?うざいです」
「だんだん俺への言葉扱いが荒くなってませんか」
……ああ、確かに仕事の上司にあたる先生にうざいですはなかったな。謝ろう。
「嬉しいです」
やっぱいいや。