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そのあとのことは、あまり記憶にありません
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お偉いさんからパートのお姉さま方に挨拶を終えて、また恐る恐る端末を確認します。
朝倉宗辰:今、佐々木先生の家に着きました。
朝倉宗辰:今、佐々木先生の家を出ました。
朝倉宗辰:今、図書館の最寄り駅に着きました。信号待ちです。もう直ぐ会えますね。
朝倉宗辰:今、図書館の駐車場に車を停めました。
朝倉宗辰:今、図書館の中に入りました。
朝倉宗辰:今、なるみさんを見つけました。
背後から、足音が聞こえてきます。
私は恐怖のあまり、逃げ出すどころか、振り返ることすらできませんでした。
足音は、私の直ぐ近くで止まります。
「ーー朝倉です。今、なるみさんの後ろにいます」
ーーそのあとのことは、あまり記憶にありません。
気がついたら、宗旦狐が腹部を抑えてうずくまっていました。
「気持ちわりいんだよ、くそが!!!」
私は、息を切らせながらそんなことを言っていました。