54話目
打ち切りが決まった漫画のキャラクター達がどうにか物語を延命させようとするお話
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「ペットを飼ってみるとかどうだろう?」
こりずに提案してみる。まぁ、ペットを飼いながら冒険するってのは難しいってわかっているんだけど、どうしても癒しが欲しくってね。
「…それは、良いな。」
おっと、意外にも好感触。
「ペット系のキャラクターなら何をやらせても人気が出るし、良い案だと思うぞ。誉めてやろう。」
おおっ、やったぜ。これでこの理不尽極まりない世界に心のオアシスができる。
「ペットと言えば猫だよな。実は俺、黒猫派なんだよ。黒猫で良いだろ。」
「なっ。何を馬鹿な事を言ってる。ペットと言えば犬だろうが。大体、猫なんて9割寝ているではないか。それでは戦闘の役に立たんじゃないか。」
犬?犬も良いけど、俺にとってペットってのは猫なんだよ。100歩譲ったとしても猫科以外ありえない。
「確かに猫じゃ戦闘は無理だけど、豹やライオンならどうよ。戦力としても十分だし、丸まっているライオンのお腹の部分を枕にして本でも読んでみたいなんて思ったこと無いなんて言わせないよ。」
「いや、犬だ。そもそも戦いにおいて人間と犬の共闘の有効性は歴史で証明されているではないか。それにあの、自分に絶大な信頼を寄せる犬の目は何物にもかえがたいものだぞ。」
自称ヒロインも食い下がる。さてはこいつ、犬派だな。
「まぁまぁ、そんな事で喧嘩せずとも良いではないですか。」
唐突にタキシードを着た垂れ耳ウサギに声をかけられる。
「おっと、申し遅れました。ワタクシ、マスコット派遣協会からこちらに行くように言われた白兎の「ハクト」と申します。どうぞ、以後、お見知りおきお願いいたします。我らマスコット派遣協会ではそれぞれの物語に合うマスコットを派遣しており、こちらの世界にはワタクシが合うという判断がおりました。いかがでしょうか?1話ごとに3万、もし気に入っていただけまして、正式にこの物語の登場キャラクターにしたいという時には、別途50万の契約金で専属契約も可能となりますです。ハイ。」
うっ、確かにこの場違いなキャラクターはこの物語とあっているかもしれない。だけど、方向修正したいのであって、グダグダを続けたいわけじゃないし…。
ふと、自称ヒロインを見ると明らかに迷惑そうな目をしている。
「…、気持ちはありがたいんだけど、ちょっと意見が割れててね、何かあった時はお願いするよ。」
当たり障りない言葉でお断りする。
「そうですか。それではマスコット派遣協会のパンフレットと名刺を置いておきますのでご希望があればご連絡ください。」
そう言うとハクトは何処ともなく消えていく…。
そして辺りも暗くなる。
あーぁ、猫、飼いたかったな
私は猫派
良いよね、黒猫