53話目
打ち切りが決まった漫画のキャラクター達がどうにか物語を延命させようとするお話
「野球とかやらなくて良いのかな?」
「なんで?」
三人同時で返される。おかしいな?それほど変な提案をしたわけじゃないと思うんだけど。
「昔から野球と言えば人気を取るための常套手段でしょ」
「あほか。」
自称ヒロインさんが吐き捨てる。
「良く聞け。野球で人気が取れたのは、子供たちが公園で野球をやっていた頃の話だ。公園でボール遊びが禁止になって野球というものが身近に無くなったガキを相手にしているのに、何故いまさら野球で人気取りができると思ったんだお前は?」
22歳の自称ヒロインの言うセリフか?そんな突込みより、口を開くたびにヒロインらしさが無くなっていくのをどうにかしてくれよ。
「いや、厳密に言えば野球がやりたいんじゃないんだよ。野球を通して男同士の熱い友情や勝負の緊張感、挫折や成功を描きたいわけだよ。」
「男同士の熱い友情に成功?俺の出番か?」
「アレフは黙ってろ。」
ある意味こいつの思考が一番わからん。
「お兄ちゃん、男同士の熱い友情や勝負の緊張感を描きたいんだったら別に野球で描かなくったって良いじゃない。第一、挫折や成功を描くために野球をする。ならともかく、お兄ちゃんは、野球をすれば挫折や成功を描けるとか思っているでしょ。そんな安い見積もりじゃ失敗して終わりよ。」
あぁ、辺りが暗くなってくる。今週はこれで終わりか。って事は野球の件は却下って事ね。
うーん、人気取りなんて好まれる事をやってりゃ良いと思ったけど難しいのね。