41話目、新たな旅立ち
初めましての人もいるだろうからとりあえず自己紹介をしておこう。僕の名前は斉藤祐一。デビュー作で初連載ながらも問題なく40週が経過したストーリー系ナンセンスギャグ漫画「チェンジングワールド」の主人公だ。
うまくやろう、うまくやろうとして結果的に酷くなったりする漫画なのだが…、どうもこの間から様子がおかしい。急に非人道的な組織が現れたり戦う為の特殊能力の説明が延々続いたり、作風の違うキャラクターが絡んできたり。こんな事で読者は笑ってくれるのかね?
まぁ、良いや、こっちは自分の役割をこなすだけだ。
と、突然後ろから声をかけられる。
「探したぞ、斉藤祐一。」
あー、この声はあいつだ。えーっと、そう、アレフ・ブレット。名前からして場違いのこいつはこないだからちょくちょく出てくる銀色の長髪に碧眼という現代日本劇にいてはいけないタイプの新キャラだ。
「またお前か。お前と絡んでも笑いにつながらないから嫌なんだよ。どっか行け。」
「そうは行くか。」
そう言いながらずんずんと近づいてくると僕の首に腕を回して来る。
「だから、なんでお前は出てくるたびにベタベタと引っ付いてくるんだよ。鬱陶しいんだよ。」
怒りに任せて突き飛ばす。
責めるような目で僕を睨みながらアレフが答える。
「決まっているだろ。腐女子人気が欲しいからだよ。」
「そうやってあっちこっちに媚び売って、で、最終的に本質を見失うなんて駄目漫画の見本じゃねーか。今まで通り堅実にナンセンスギャグをやってりゃいーんだよ。」
不思議な沈黙が数秒流れる。
「お前…、この漫画が打ち切りルートに入った事に気がついていないのか?」
「えっ、うそ。」
…いつか来るとは思っていたがまさかこんなに早いとは。
目の焦点が合わずくらくらする。
「いや、でも、打ち切りだったとしても急に路線変更をするんじゃなくって、今まで応援してくれた読者の為にもギャグ漫画を貫くべきなんじゃないか?」
「その読者がいないから打ち切りルートに入ったんだよ。」
目の前が真っ暗になる。
あぁ、これで今週号は終わりだ。