生死をさまよう(改)
ストローてのは、細長い茎みたいんで、中が空洞になってた。
そこから、口に入れようってことかな。
ありがたい。末期の水 になるのかな・・
俺は、必死にこぼさずに飲もうとしたが、だめで、結局、動物病院に
連れていかれた。もう抵抗する元気がない。
なにか、チクっと痛いと思ったけど、もうそのまま寝た。
グッバイ おばちゃん。ごはんありがとな。
俺は薄目をあけて、目でお礼を言った。
俺はいま、天国にいるのか?母猫に抱かれてる。ウトウトしてるのか、
目を覚ましては、母がいるのに安心し、ウトウトする。
母が俺の額を優しくなめてくれたまでは、覚えてる。
で、俺は熟睡したようだ。天国ってすごく眠くなるところなんだ。
目を覚ましたら、そこは、敦子おばちゃん家の玄関だった。
かあさんは、どこにもいなかった。舐めてもらった感触は覚えてるんだけどな。
俺、死ななかったんだ。あの、動物病院 ってとこで
具合悪い原因の元ーイヤなニオイのネズミの死骸ーを取ったんだろう。
でもまだ、だるい。食欲もない。
「チャトラちゃん。よかった。もう少しで死ぬところだったのよ。
何か、食べたいもの、あったかな」
俺は”今は無理”って答えたけど、おばさんには通じなかったようだ。
おばちゃんは、おかゆに鰹節をまぜて、俺にたべさせようと
したが、呑み込めない。
体を腕でもちあげ、なんとか水だけは自分で飲めた。
そして、一日中、水を飲んでは寝ての繰り替えし。
俺はもう老人猫になったのか・・
そう心配もしたけど、次の日は、おかゆなら少しは食べられるようになった。
そうなると、俺の回復力ははやく、ダンボールから出られるように。
ちょっと家の中をのぞいてみる。他の猫のニオイも犬のニオイもしない。
「まあ、チャトラちゃん、そこまで元気になって、うれしい。でも
ごめんね。家の中で飼ってあげられないのよ。うちの娘が猫アレルギー
。この間の納屋じゃなく、もう一つの物置に寝床を用意したから、
これからは、そこで寝てくれるかな」
俺は、抱き上げられ、あのイヤナにおいのする納屋から、別の納屋に
連れていかれた。そこは、古新聞だの空き缶だの。ガラクタやよく
わからない、いろんな物が、ごちゃごちゃおいてあった。
そこに、丸いベッドがデンとおかれている。
そばには、水もごはんもあった。
まあ、前のところよりは窮屈だけど、イヤなニオイがしないから
こっちのほうが、ずっといい。
3回、お日さんが出るのを見た。その間、ここにいては、
食べては寝てを繰り返した。そのうちスッカリ体調がもどり、
夜のパトロールも開始した。
相変わらず、ネズミはいるけど、威嚇して追い払うだけにした。
食べて、あんな苦しい目にあうのは、ごめんだしな




